外苑の歴史的景観の問題というより、わたしたちの社会的な専門性を曖昧に機制してきた歴史過程の問題なのだろう。
「新国立競技場国際コンクール」および新国立競技場の建築に関する資料を、ウェブ上の資料を中心に、できるだけ網羅的に収集・整理していくプロジェクトです。
2012年11月15日、同コンクールでザハ・ハディド氏の案が最優秀賞に選ばれ、その後、日建設計JVを設計者として具体化が進められましたが、2013年8月15日に発表された槇文彦氏の論考(『JIA MAGAZINE』295号)に端を発して新国立競技場の建築をめぐる議論が巻き起こったこと、またプロジェクト自体も相当の紆余曲折を進み、2015年7月に安倍首相の”決断”により白紙撤回とされたこと、その後の選考で隈研吾・大成建設・梓設計JVがまったく新たな設計を進めていることなど、周知のことかと思います。
しかし、この問題について、厖大な関連資料を集めて事実関係の全貌を把握するのは容易な作業ではありません。また、関連する言説は、様々な立場から、様々な媒体に発せられ、また当然ながら様々な論点を含んでおり、単に「反対/賛成」の対立に帰せられるものでもありません。そこで、これら資料・言説へのアクセスを容易にすることを目的として、諸情報をまとめるデータベース・サイトの作成を研究室として進めてみることにしました。それが下記のウェブサイトです。
ウェブサイト:新国立競技場データベース
収集した記事に①時系列、②メディア別、③発信者別という三つの観点から整理し、それぞれの記事内容に対して11種類のタグを付けています。まずは「資料集」の各メニューからご覧いただければと思います。
関連する成果:
- 青井哲人「建築コンペティションの政治学──新国立競技場コンペをめぐる歴史的文脈の素描」(10+1 website 2013年12月号 特集「「東京オリンピック」からの問い──2020年の都市計画は可能か」)
- 明治大学建築史建築論(青井)研究室、展示パネル(「東京オリンピック2020から東京を考える」日本建築学会建築文化週間2014 )
- 槇文彦+内藤廣+青井哲人+浅子佳英「新国立競技場の議論から東京を考える」(コメント:五十嵐太郎/モデレーター:松田達、「東京オリンピック2020から東京を考える」日本建築学会建築文化週間2014 10+1 website に2014年11月 掲載)
- 青井哲人「新国立競技場問題をめぐる議論はなぜ空転したか」(10+1 website 2015年10月号 特集「新国立競技場問題スタディ──「白紙撤回」への経緯と争点」)
- 明治大学建築史建築論(青井)研究室「メディアのなかの新国立競技場問題」(『建築雑誌』2015年7月号特集「メディア・コンテンツ化する建築」) → 関連ブログ記事: vestigial tails/tales 2015年7月14日の記事 / 研究室ブログ 2015年7月9日の記事